都会の喧騒から離れて、
自然に身体を委ねる
セレクトショップ『ロンハーマン』で販売、VMDを経験した後、フローリストに。アパレル出身者ならではの感性を生かした花の質感や意外性のある色の組み合わせのセンスがSNSなどを通じて人気に。知り合いが営むワインバー『TOMIGAYA CALME』の一角を借りて、2017年フラワーショップを『whole』を代々木八幡にオープン。美容師である旦那様のヘアサロン『AWRY BY THE MANNER』を併設し、2019年にリニューアルオープンしました。ウェディングやブランドとのコラボレーションなど、活動の幅を広げている。
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生きることは、取捨選択の連続。
何かをやめて、何かを新しくはじめれば
“私”の未知なる可能性を見つけることができるはず。
「除いて、与える」をテーマに、
自分らしい人生を歩む女性たちをフォーカスするこの連載企画。
今回は、フローリストとして活躍する綱川禎子(ツナカワヨシコ)さんが、
いきいきと働くために心のメンテナンスとして始めた
「やめたこと、はじめたこと」についてお話していただきました。
綱川禎子さんがオーナーを務めるフラワーショップ『whole』は、美容師である旦那様のヘアサロン『AWRY BY THE MANNER』の併設ショップ。夫婦の念願が叶い、代々木上原に出店してから丸3年の月日が経過しました。
「自宅もお店まで徒歩で通える場所にあり、とても便利な暮らしを送っていたのですが、コロナ禍になって時間に余裕ができたときに、ふと都会に疲れているかも? と思ったんです。街に出れば人は多いし、接客は好きだけれど、ずっと気を張っているだけじゃなくて、緩める時間も必要だなと考えたり。何かリフレッシュできるきっかけがあればいいのにと思ったとき、もともと夫と共通の趣味である、キャンプに出かける頻度を増やしてみようと思ったんです」
感度の高い人々が集う街は刺激的で楽しくはあるけれど、自然と戯れることで心を開放する時間を持とうと決めた綱川禎子さん。
「都会のような人が多い場所だと、会いたい人にも会いづらい時代になってしまいましたが、広い空の下でなら友人たちともお互い安心して過ごすことができます。夫婦だけで出かけてもそう。人目を気にすることなく、リラックスできるんです」
キャンプ中のお気に入りの過ごし方のひとつとして、綱川禎子さんがあげてくれたのが「焚き火」。
「炎の揺らぎを見ていると、心が穏やかになるってよく言われますよね。実はふだんからお風呂に入る時間を大切にしていて、お風呂ではキャンドルを炊いているんです。キャンプでの焚き火はその延長。のんびり炎を囲むだけで、何もしない時間が心を癒してくれます。夫は仕事上のパートナーでもあるので、家にいると仕事の話題ばかりになっていますが、焚き火をしながら過ごすときは不思議とそれとは関係のないことを語り合っています。キャンプマジックなのか、仕事の話をするとしても、今後の展望だったり、深いことを話せるんですよね」
炎を囲むことで、人との心の距離が近くなるのを実感するそうです。
花は、季節の移ろいを気づかせてくれるものだと綱川禎子さんは言います。
「花もファッションと同じで、先駆けです。チューリップは春の花だけれど、まだ寒い時期から市場に出始めて、春が来るんだなと感じさせてくれます」
季節の花で気分を上げるのと同じく、キャンプする中で五感が感じとる季節の移ろいも、心を浄化させてくれます。
「花を生けているときと一緒で、秋の紅葉や、夏の青々と生い茂る緑などの自然は、その季節ならではの素晴らしい景色を全身で感じさせてくれます。キャンプ飯にしてもそう。秋は秋刀魚、冬はお餅を焼いたりと、旬の食材を使って外で食べるご飯は美味しいです。音楽をかけてもOKな場所だったら、好きな音楽を流しながらお酒を飲むのですが、都会にいるときとはまったく違う時間が流れています。外気を感じたり、目の中に飛び込んでくる情景がいつもと違うと、何をしても新鮮な気持ちになれるんです」
キャンプから帰ってくると、完全にオンオフの切り替えができているのが分かるのだそう。
「自然に触れると心身のチューニングができるんです。どんなに好きなことでも、ずっと走り続けることはできません。フローリストという仕事を大切にしたいからこそ、息抜きをする時間も必要。キャンプをすることで心を整えて、都会で働く自分へムリなくスイッチする。あらゆるものが電子化されている普段の暮らしからデジタルデトックスするという意味でも、キャンプは私にとってなくてはならないものです」
都会を離れて、ひととき、便利すぎる生活を辞めてみる。その分、自然の中で心を癒すことが、綱川禎子さんが始めたルーティン。
「キャンプから帰宅すると、自分が身軽になっているのが分かります。気分もすっきりしていて、ポジティブになれる。すべてをクリアにしたところで、また頑張ろう、というエネルギーが湧いてくるんです」
Photographer : Kazumasa Harada
Writer : Ai Watanabe
Editor : Haruyo Sugie (Roaster)
Director : Sayaka Maeda (FLAP,inc.)
日々の暮らしを少しだけ豊かにするヒントについて、素敵な方たちに語っていただきました。